今回は、
残業手当の請求に関する判例を紹介します(つづき)。
5 学校職員の正規の勤務時間は、全日制の場合、平日は八時三〇分から一七時一五分まで、土曜日は八時三〇分から一二時三〇分まで、定時制の場合は一二時五五分から二一時までであり、学校職員及び生徒は、全日制の場合は遅くとも二一時ころまで、定時制の場合は通常二二時ころまで例外的に遅くなる場合でも二三時ころまでに帰宅しており、それ以後早い場合で翌日の六時三〇分ころに早朝のクラブ活動のため生徒や教師が登校するまでは、学校に居るのは常駐警備員のみであった。常駐警備員の来校は学校事務長が確認していたが、校内における警備員の仕事を実際に監視監督する者はおらず、夜間警備員が学校を離れても、近畿保安警備も学校側もそれを把握することは困難であった。
6 常駐警備員は学校職員や生徒から仕様書に記載されていない仕事を依頼されることがあり、昭和四八年ころから組合としてもその点を問題とし、個々の警備員も近畿保安警備から右2のとおり指示を受けていたので、それが自己の仕事ではないことを認識していたが、人間関係を損なうことを危ぐし、また緊急の場合には本来の仕事ではなくても行うのは当然であるとの考えから、実際には、外部からの電話を内線を回したり呼出放送をするなどして取り次いだり、生徒らが負傷しあるいは疾病にかかった際の介助や連絡を行い、電話連絡をメモして学校側に渡したり、学校への納入業者から物品を受領するなど、仕様書に記載されていない事務を処理することもあった。被告府は学校当局に対し、警備員に対する指揮監督は会社が行うものであること、警備員には仕様書以外の業務をさせないことを繰り返し通知していた。
7 警備員は警備業務日誌を記録し、昭和五一年度まで学校側に提出していた。右日誌のほかに学校によっては警備員との間で連絡ノートや連絡帳を用いていたところもあったが、右日誌等の記入は警備員と学校側の連絡を密にするという目的から行われていたものであり、警備員の指揮監督の手段としてなされたものではなかった。
8 常駐警備員が着用している制服や使用している寝具、巡回時計及び懐中電灯並びに本件警備業務に使用しているパトロールカーや感知機等警報警備の装置については、近畿保安警備がその費用を負担していたが、冷暖房器具やテレビについては学校に設置されているものを利用することが多かった。
9 本件委託契約書一二条には、「近畿保安警備は、作業員の指導教育には責任をもってあたり、不都合がある場合には被告府の指示により再教育又は交替等の措置をとらなければならない」、一四条には「被告府は近畿保安警備の作業員で契約の履行又は管理につき不適当と認められる者がある場合には、理由を示して他の者と替えることを近畿保安警備に求めることができる」と規定されているが、これは被告府として、夜間警備員一人に学校全体を任せるのであるから警備員の資質に十分関心を払っていたため設けられたものであり、被告府は近畿保安警備に対し、従業員を替えるよう求めることができるにとどまり、実際に配転する権限を有していたわけではない。
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