今回は、
残業手当の請求に関する判例を紹介します(つづき)。
(二)原告らの損失
原告らは、時間外労働(残業)を含めた労務を提供したが、近畿保安警備から一日八時間相当分の賃金の支払を受けたにとどまり、時間外労働(残業)の労務に相当する損失を蒙った。右損失の額は適法な手続のもとに時間外労働(残業)に服したときの対価たる割増分も含めた賃金額を下回らない。
(三)利得と損失との因果関係
(1)被告府は本件委託契約により原告らから時間外労働(残業)に対する賃金の支払を必要とする労務の提供を受けながら、近畿保安警備に対し右賃金を含まない委託金しか支払わず、そのため原告らは同社から右賃金の支払を受けられなかった。
(2)本件警備業務は府立高校等の維持管理としてなされるものであり、被告府は原告らの労務を直接受領したといえるから、その受領により利得を生じた。労務提供の受領者が近畿保安警備であるとしても、本件警備業務の遂行は、一面において原告らの前記損失を生ぜしめ、他面において被告府に右利得を生ぜしめたものである。
(3)原告らは近畿保安警備に対し、時間外労働(残業)に対する賃金相当額の債権を有するが、このことは被告府に対する不当利得返還請求権を否定するものではない。
1 原告らの損失及び被告府の利得は偶発的事情によるものではなく、被告府が自ら当事者として締結した本件委託契約によるものである。
2 原告らの近畿保安警備に対する債権は、雇用契約によるものではなく、違法な時間外労働(残業)に服したことから生じる不法行為による損害賠償請求権であり、不当利得返還請求権と併存する。
3 近畿保安警備は破産宣告を受けその配当は皆無であり、原告らの同社に対する債権は無価値である。
(四)法律上の原因を欠くこと
本件委託契約は、原告らの就労時間と労務内容を規定しながら、委託契約金に時間外労働(残業)に対する賃金相当額を含まないから、必然的に原告らが近畿保安警備から時間外労働(残業)に対する賃金の支払を受けられないという労働基準法違反の状態を招来するものである。したがって、労働基準法に違反する不当な本件委託契約に基づく被告府の利得は正義公平の観念に照らし正当とはいえず、法律上の原因を欠く。
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