今日は、
残業手当の請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。
3 原告らの場合右3の要件も充足していない。
(6)法四一条三号は、労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用排除が重大な効果をもたらすため、これを行政官庁の許可にかからしめ、行政官庁に対し右許可にあたって当該労働者の労働実態についての調査業務を課し、右調査義務は許可後も継続するというべきである。法律上右調査義務が認められないとしても、行政官庁は、自らの先行行為に基づく条理上の作為義務として、違法な許可処分を取り消す義務がある。
(7)天満労働基準監督署長は、本件通達の基準に達しない本件許可処分を通達示達後相当期間内に取り消すべき義務がある。しかるに同監督署長は、本件許可処分を昭和五一年一二月九日まで漫然と放置し続けたものであり、被告国は右不作為による責任を負うべきである。
(三)原告らの損害
原告らは本件許可処分により、本来雇用契約上の義務がないのにあると信じ、時間外労働(残業)の労務提供という損害を蒙り、さらにそのため人たるに値する生活を営むために最低必要な睡眠時間や自由時間をとることができず、人間的な生活を破壊されるという損害を蒙った。この損害額は適法な時間外労働(残業)に対する賃金額を上回るものであるが、原告らはそのうち右賃金に相当する額を請求する。
(四)被告国の行為と原告らの損害との因果関係
(1)本件許可処分は昭和五一年一二月九日取り消された。
(2)本件許可処分は、原告らの労働実態が法四一条三号の予定する基準に達しないにもかかわらずなされたもので、違法無効の処分である。
(3)本件許可処分が無効、または右取消により遡及効があると解する場合、原告らには時間外労働(残業)に対する賃金請求権が発生する。しかしながら、本件委託契約金額は、右賃金請求権が発生しないという前提で決定されており、原告らも右賃金請求権が発生しないものと考え、昭和五一年までは近畿保安警備に請求しなかった。そのため右請求権の行使が著しく困難となり、近畿保安警備が破産し、破産手続が廃止されたことにより、同社に右請求をすることは確定的に不可能となった。そして、本件許可処分がなされなかったならば、本件委託契約金額は時間外労働(残業)に対する賃金をも前提として決定されていたであろうから、本件許可処分と同処分取消前の原告らの損害との間には相当因果関係が存する。
(4)本件許可処分の取消に遡及効はないと解した場合、原告らには時間外労働(残業)に対する賃金請求権は発生しないから、本件許可処分と原告らの右損害との因果関係は明らかである。
(5)原告らは本件許可処分の取消以降、近畿保安警備に対し時間外労働(残業)に対する賃金請求権を取得したが、右取消時点において既に本件委託契約が締結されており、その契約金額は到底右賃金の支払に足りず、原告らの被告府に対する交渉によっても変更されず、その後も増額されなかったため、原告らは右取消以降においても右賃金請求権の行使が不可能となった。天満労働基準監督署長が本件許可処分をし、しかも七年半にわたって取消をせず放置したため、被告府は本件委託契約金額の増額に応じなかったものであり、本件許可処分取消後に生じた原告らの損害と右労働基準監督署長の行為との間には相当因果関係が存するというべきである。
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