今回は、
残業手当の請求に関する判例を紹介します(つづき)。
10 被告府は昭和五四年一二月ころ近畿保安警備に対し、当時桃谷高校の常駐警備員であった新谷明博について、警備員から別の仕事に配転するよう要求し、同社はそれに応じたことがあるが、これは新谷が学校の電話を無断で私用に用い、学校側が高額の電話料を負担せざるを得なくなったことによるものである。
11 組合は昭和四四年ころから被告府に労働条件の改善等についての交渉を求め、昭和五二年三月には大阪地方労働委員会に府教委を相手方として団体交渉を求める旨の斡旋申請をしたことが契機となり、同年四月以降同五四年九月まで被告府と組合間で頻繁に会合が持たれているが、被告府としては組合員の使用者ではないため団体交渉ではなく単に組合の要望を聞く機会と考えており、会合のなかで警備員の労働条件が決定されたことはなかった。
(なお、以上の事実のうち、原告らが近畿保安警備の従業員として本件警備業務に従事していたこと、本件委託契約書一四条の記載内容、被告府は近畿保安警備に同社の従業員であった新谷明博を警備員から別の仕事に配転するよう要求し同社はそれに応じたこと、実際に原告らは仕様書に記載された以外の業務を行っていたことがあることは、原告らと被告府間において争いがない。)
三 原告らは、原告らと被告府との間には使用従属関係があり、被告府は原告らに時間外賃金を支払う義務を有する旨主張するので、前記認定事実に基づき検討する。
1 近畿保安警備が赤字を出さないためには、従業員の賃金総額を本件契約金の範囲内に抑える必要があることはいうまでもないが、このようなことは大口の取引先に依存している企業一般にいえることであって、経費を切り詰めるなり、他の取引先を開拓する等の企業努力によって対応すべきであること、前認定のとおり本件契約金は近畿保安警備の従業員の賃金を積算したうえで決定されたものではなく、個々の従業員の給与額の決定は近畿保安警備が行い、被告府は何ら関与していないのであるから、被告府が原告らの賃金額を現実に決定しているとはいえない。
2 原告らは本件契約書添付の仕様書が原告らの労務提供に対する被告府の指示命令であると主張するが,仕様書はあくまで近畿保安警備と被告府との間の契約内容にすぎず、この契約内容を具体的に実行するものは近畿保安警備であり、原告らは近畿保安警備の指示により警備業務に従事していたのであるから、仕様書により被告府が原告らの労務提供を指示命令していたということはできない。
3 本件委託契約書の一二条及び一四条は、被告府の近畿保安警備に指示する権限を記載したものであるが、実際に配転する権限は近畿保安警備にあるから、被告府が原告らに対し人事権を有していたとはいえない。
4 被告府と組合間において組合の希望により会合を行っていたが、これは被告府が原告らの使用者であることを認めたものではない。
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