今回は、
残業手当の請求に関する判例を紹介します(つづき)。
5 請求原因5(一)ないし(四)の事実は否認し、その主張は争う。本件契約金は人件費をいくらと計算して決めているものではないから、被告府が八時間労働相当分の人件費しか支出していないとはいえない。また、近畿保安警備が労働条件を決定しているのであるから、時間外労働(残業)に対する賃金相当額が本件契約金に含まれているか否か即断することはできない。したがって、割増賃金(残業代)相当額が利得されている旨並びに本件委託契約自体が労働基準法に違反する旨の原告らの主張は失当である。
(被告国)
1 請求原因1(一)及び(三)の事実は認め、同(二)の事実は知らない。
2 請求原因2(一)ないし(四)の事実は知らない。
3(一)請求原因3(一)の事実は認める。
(二)(1)同(二)のうち、原告らの労働が法四一条三号の監視又は断続的労働に該当しないとの主張は争う。
(2)法四一条三号所定の監視労働とは、原則として一定部署にあって監視するのを本来の業務とし、常態として身体の疲労又は精神的緊張の少ない労働をいい、断続的労働とは、本来業務が間欠的であるため労働時間中においても手待時間が多く実作業時間が少ない労働をいい、両者は必ずしも明確に区分し得るものではないが、いずれも通常の労働と比較して労働密度が希薄であることが共通し、それ故、法所定の労働時間、休暇、休日の規定を適用しなくても労働者保護に欠けるところがないので、本条によってその適用を除外したものである。ただし、監視又は断続的労働といってもその態様は千差万別であり、一般の労働と明確な区別をつけ得る客観的基準がないため、右適用除外を行政官庁の許可にかからしめているのである。
(3)原告らの従事した警備業務は学校の放課後における校内の火災、盗難等の予防のための警備、電話や文書の収受等であり、学校における一般の宿直や日直業務と何ら異なるものではない。午後一〇時より翌日午前六時までの八時間については、その間に警報機が発報するという稀な場合を除いては、原告らには業務はないのであり、宿直室において寝具を用いて睡眠している。また、校内巡視回数についても、平日四回、土曜日五回、日曜祝祭日六回であって、一回当たりの所要時間は三、四〇分であり、他に電話の応対、取次や来校者の応対などの単純作業がたまにある程度で、その労働密度は極めて希薄である。
(4)原告らは平日において午前八時半から午後五時までの間職場を離れて自由時間が確保できるのであり、さらに本件許可処分の撤回後においても、原告らの労働態様は、割増賃金(残業代)の支払の点を除けば従前と同様であって、過酷で非人間的な生活を強いるものとは到底いえない。
(5)原告らは、土曜日曜祝祭日等の連続勤務により非人間的な長時間抱束を強いられる旨主張するが、このような場合には代替人による代勤が保障されるほか、有給休暇権の行使もなし得る。
(6)以上のとおり、原告らの労働は法四一条三号の監視又は断続的労働に該当するものであるから、本件許可処分は適法である。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、
顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、
不当解雇、
保険会社との交通事故の示談交渉、
刑事事件や
多重債務(借金)の返済、
遺言・相続の問題、
オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
PR