今回は、
残業手当の請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。
3 本件警備業務は監視又は断続的労働に該当しないこと
(一)天満労働基準監督署長は昭和四三年六月三日、近畿保安警備(当時の商号は株式会社オーエスシー保安管理事業所、以下商号変更前でも近畿保安警備という)が同年五月二五日にした申請(以下「本件申請」という)により、労働基準法(以下単に「法」ということがある)四一条三号の適用除外許可処分(以下「本件許可処分」という)をした。
(二)しかしながら、原告ら常駐警備員の労働は、法四一条三号の監視又は断続的労働には該当しない。
(1)監視に従事する者とは原則として一定部署にあって監視することを本来の業務とし、常態において身体又は精神的緊張の少ないものをいう。
1 原告らは、平日勤務において二二時から翌日午前六時(現実にはこれよりも短いことが多い)までは警報装置をセットしたうえで警備員室で監視業務につき、異常がなければ仮眠してよいとされているが、これ以上の七時間半の時間帯においては一回に三〇分以上要する四回の巡視、残留者の退出、各教室の窓や出入り口等多数箇所の戸締りの確認、外来文書、電報及び電話の収受、電話に対する職員等の呼出など警備員室外で多岐にわたる諸業務に従事し、これらに長時間を要する。
2 このように原告らの業務は監視に尽きるものではなく、それ以外にも多くの重要な業務があるから、原告らは監視に従事する者にはあたらない。
(2)断続的労働に従事する者とは休憩時間は少ないが手待時間が多い者をいう。しかし、原告らは、校内に常駐警備し、巡視、呼出などをしていないときも校内の監視に従事しており手待時間は皆無であるから、原告らは断続的労働に従事する者には該当しない。そして、断続的労働か否かを判断するにあたり、監視を手待時間に含めることは概念矛盾であり相当でない。
(3)法四一条三号の監視又は断続的労働に該当するためには、形式的に労働形態がそれにあたるのみならず、法第四章及び第六章の労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用がなくとも労働者保護に欠けることがない場合でなければならない。
1 原告らの業務は平日でも一五時間三〇分に及び、その業務内容も前述のように極めて多岐かつ密度が高く過酷である。二二時から翌日六時までの仮眠時間帯においても、僅かな物音に飛び起きる程精神的緊張は高くその度にその原因を確かめに行かなければならない。このような労働密度からして、原告らに右諸規定の適用が除外されることは労働者保護に欠ける。
2 原告らは、平日一五時間三〇分、土曜日二〇時間、日曜祝祭日二四時間労働し、祝祭日がない場合でも一週間一二一・五時間もの長時間労働し、さらに土曜日曜には連続して四四時間、土曜日曜祝祭日が続く場合には連続して六八時間も労働し拘束され、人たるに値する生活を営む自由時間はない。このような労働時間、拘束時間が長いことからして、原告らに右諸規定の適用が除外されることは労働者保護に欠ける。
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